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2018FIFAワールドカップロシア大会 日本代表対ポーランド代表 ヴォルゴグラードアリーナ

引き分け以上、負けても他会場の結果次第でグループリーグ突破が決まる日本代表。残念ながらこの試合には0-1で敗れてしまいましたが、同時に他会場で行われていた試合でコロンビア代表がセネガル代表に1-0で勝利。日本代表とセネガル代表は、勝ち点、得失点差、総得点、当該チーム同士の対戦成績まですべて同じ数字となりましたが、反則ポイントの差でセネガル代表を上回った日本代表がグループ2位に滑り込み、見事決勝トーナメント進出を決めました。

 

緊張のせいか、はたまた先発6名を入れ替えたせいか、ミス連発で試合にならない立ち上がりの日本代表。ボールを奪われ、縦パスを許し、追い込まれてロングボールしか活路を見いだせなくなってきます。とりあえずカウンターだけは許すな。反則ポイントの関係でイエローカードも怖い。

一方のポーランド代表はこれまでの2戦と変わらぬショートパス攻撃。しかもパズダン選手もいないし、リブス選手もいないし、攻撃の核となりそうな選手をベンチに置いてしまい、コンディションの問題かもしれませんがもしかしたらこれはもう出場機会のための試合なのかもしれません。ジェリンスキ選手をトップにおいてもそこにボールを回す選手が不足しているので、日本代表はちょっとチャンスかもしれません。

それにしてもカメラアングルが悪く試合が見づらいことこの上ない。前線の動き出しやディフェンスラインのバランスが全く見えないしすぐに選手のアップ画像に切り替わってしまうので試合の様子がわかりづらい。コロンビア代表戦もそうでしたが、本当にこの辺り、何とかしたほうがいいと思います。

そういうわけでここから先の戦評には想像の要素がいつもより多くなりがちですが、たぶん間違っていないと思うのでよろしくお願いします。

ポーランド代表はショートパス作戦の他、フォワードがサイドに開きサイドバックとの1対1の局面を作り出して、そこから起点を作ろうとしたように思います。サイドバックの頭めがけてボールが飛んでくるので、日本代表のセンターバックはあまり競ることすらできませんでした。センターバックと争うよりサイドバックの方が弱いことが多く、万が一競り合いに負けてもサイドでボールを失うのでカウンターにはつながりづらい。当たり前のことが徹底できている辺りはさすが世界の強豪だなと思います。

日本代表はいつものように中盤からの展開でスルーパスなどを狙っていきたいところでしたが、せっかく相手がショートパス作戦できているのにこちらの守備のバランスが悪くてインターセプトにつながらず。ビルドアップでは雑なプレーが目立ち、ボールを蹴りやすい体勢を作ることができません。前線にボールが収まらないこともあり、引き分けでもいいという状況も後押ししたのか、ポーランド代表の前線のプレスがほとんどないにもかかわらず攻撃の形を作ることができず、前半は互いにスコアレスで試合を折り返します。

後半に入り、怪我の岡崎慎司選手に代わり大迫勇也選手がピッチに。ちょっと得点も狙っておきたい日本代表はサイドバックも少し上がり気味になるのですが、後ろの方で少し困った状況に陥ります。

後半8分、宇佐美貴史選手のシュートは仕掛けが遅くポーランド代表DFがブロック。ボールを拾ったポーランド代表は楔のパスを入れる。対応に行く槙野智章選手でしたが、あっさり裏を取られ、ポーランド代表のカウンター発動。幸いゴールキーパー川島永嗣選手が前に出て難を逃れるのですが、今シーズンアジアチャンピオンズリーグ含め、裏を取られてスピードで負けることの多かった槙野選手にとってありがたくない展開。以後槙野選手のプレーに迷いが生じ、サイドバックが高い位置を取り始めたこともあって、日本代表のボランチとセンターバックの間にスペースが生まれ始めます。

後半14分、ポーランド代表はショートパスの展開で左サイドへ。山口蛍選手がマークを外して下がってしまい、慌ててプレッシャーをかけるもファールの判定。まだフリーキックからしか今大会で得点していないポーランド代表でしたが、ここもフリーキックからベドナレク選手が右足で合わせてゴール。ポーランド代表が先制します。日本代表0-1ポーランド代表

得点の欲しい日本代表は宇佐美選手に代えて乾貴士選手を投入。しかしここでプレーに迷いがある槙野選手がイエローカードを貰ってしまう。どうしても下がってしまいマークを外しクリアもままならない槙野選手。2枚目のイエローカードが出たら反則ポイントでもセネガル代表に抜かれてしまう。しかし、攻めなければグループリーグ突破できない。しかし、攻めれば食らうであろうカウンターを防ぎきれそうにない。八方ふさがりの日本代表。ここで他会場に動きがあります。

なんと、コロンビア代表が先制したのです。日本代表は、得点をあげなくてもグループリーグ突破の目が出てきたのです。もうこれにかけるしかない。0-1で負けることが今できる最善の手なのです。

そこで日本代表は武藤嘉紀選手に代えて長谷部誠選手を投入。とにかく失点を防ぎ、カウンターを防ぎ、イエローカードを防ぎ、グループリーグ突破を目指します。一方のポーランド代表は、この試合が始まる前からグループリーグ敗退が決まってしまっており、リードしているので無理に攻める必要はありません。日本代表が前線から追わなくなったこともあり、ポーランド代表は日本代表以上にのんびりとしたパス回しを始めます。

もともと前線からのプレスが乏しいポーランド代表がさらにのんびりに。プレッシャーから解放された日本代表のキープするボールは回り続け、そのまま試合終了。遅れて他会場ではコロンビア代表がセネガル代表に1-0で勝利し、日本代表のグループリーグ突破が決定しました。

コロンビア代表対セネガル代表の試合は、2戦目を見た感じではコロンビア代表の勝機は大きいと思っていましたが、実際にはセネガル代表ペースで進んでいたため、交代の隙間を突いたコロンビア代表の得点をそのままセネガル代表が返せずに試合が終わるとは想像しづらい展開でした。日本代表が他会場の試合展開まで確認したうえでの0-1敗戦を選択したのかどうかは疑問の残るところですが、日本代表の状況からはその選択肢しかなかったように思います。

大きな博打でしたが、おかげで選手を休ませ、また経験を積ませることができました。決勝トーナメントでも日本代表の健闘を期待するところです。

 

川島 永嗣 7.0 ミスの少ない安定したプレイ。守備機会はそれほど多くなかったが、ピンチにはビッグセーブでチームを救う。

長友 佑都 6.5 素早い攻守の切り替えからピンチを未然に防いだ。失点したくない試合でも効果的なオーバーラップで攻撃にも貢献。槙野選手との息があまりあっていなかったように思う。

酒井 宏樹 7.0 ロングボールがたびたび飛んできたが、空中戦でも負けなかった。体を張って最後までゴールを守った。

槙野 智章 5.0 相手を振り向かせないところまではよかったが、インターセプトまでは到達できず、裏を取られだすとマークを外して引いてしまいピンチを招いてしまった。クリアボールがほとんど相手につながってしまう。ビルドアップでファーストタッチが良くなく、効果的なフィードができなかった。

酒井 高徳 3.5 リブス選手対策で起用されたのかもしれないが、肝心の相手がベンチ。役割が中途半端になったのか、ほとんどのプレーでミスし、攻守の切り替えも遅く、失点シーンでもマークを外し、酒井高徳選手の特徴である運動量や縦への意識などいいところをほとんど見せることができなかった。守備もできるサイドハーフとしての起用は少し難しそう。

吉田 麻也 7.0 判断良くプレーできた。意外とスピードがあるので思い切ったプレーができる。ファールもいつもより少なめだった。セットプレーでは攻撃でも抜群の制空権を見せた。

柴崎 岳 6.5 いつもよりミスが多かったが、すぐに切り替えて対処しカウンターを許さなかった。勘がいいのか守備での予測も驚異的。

宇佐美 貴史 5.0 ボールタッチは非凡なものを見せるものの、判断が遅く仕掛けに時間がかかり効果的なプレーができなかった。判断の悪さは守備面でも。もっと相手に寄せられるといいと思う。

山口 蛍 4.5 守備の時視野があまり広くないので後ろの状況が把握できず縦パスを通してしまう。うっかりボールに寄ってしまい裏を取られる悪癖も露呈。空中戦ではほとんど勝てなかった。なんでプレイスキックでグリク選手につけさせたのだろう。他にいなかったのかな。挙句の果てにファールで失点にも絡んでしまう。ビルドアップでは雑なプレーで味方を慌てさせる一幕も。

岡崎 慎司 5.5 あまりボールが収まらなかったが、チャンスでゴール前にいる嗅覚はさすが。さぼる時間も長いが頑張る時間は本当によく頑張って走り回る。

武藤 嘉紀 4.5 ボールが全く収まらない。判断が悪くチャンスをふいにしてしまう。乾選手が入って守備が安定したが、せっかく思い通りにボールを追い込んでも武藤選手がさぼっていることでチャンスがピンチになってしまった。

大迫 勇也 6.5 本当にボールがよく収まる。攻守の切り替えも早いのでディフェンスも助かる。いつもと違うメンバー構成でも抜きんでた才能と意識の高さを見せつける。

乾 貴士 6.0 技術にも戦術眼にも優れた才能を発揮。今日はボールがなかなか出てこないのでやりにくかったと思う。中に入ってボールを取られると危険なので、中と外でプレーを少し変える工夫が欲しかった。

長谷部 誠 6.0 ポーランド代表がまだプレッシャーをかけてきていた時は危なっかしいプレーが見受けられたが、統率力でチームをまとめ試合を閉めた。センターバックのできるボランチは日本代表では貴重な存在。

西野 朗 監督 7.0 先発メンバーの選考については議論を呼ぶところであろうが、結果的には一つしか見えなかった選択肢にもかかわらず、その可能性を大きくできたと思う。ただ一つ、大島僚太選手はどうだったのだろうか。起用できない特別な理由があったのだろうか。