2017明治安田生命J2リーグ第42節 東京ヴェルディ対徳島ヴォルティス 味の素スタジアム

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※閲覧注意!福岡の人は絶対に見ないでね!

長かったJ2リーグもいよいよ最終戦。6位までが出場できるプレーオフ圏内ぎりぎりの6位東京ヴェルディがホームに迎えるは5位徳島ヴォルティス。得失点差の関係で引き分けてもプレーオフ出場がほぼ間違いない徳島に対し、引き分け以下だと他会場の結果次第で出場を逃す状況のため10年ぶりのJ1復帰を目指して勝って確実にプレーオフ進出を決めたい東京ヴェルディ。スペイン人監督同士の決戦はまさかのBS生中継。コイントスによりエンドを入れ替え、いざキックオフ!

聞き慣れたチャントがテレビから聞こえてくるのってなんか不思議な気分だなあ。

さて、3バックの徳島に合わせいつもの4バックではなく3バックで臨むヴェルディ。しかし、中盤がバラバラで守備が全く機能しない。挙句の果てにドウグラスヴィエイラ選手まで下がってしまい徳島に押し込まれたまま耐え忍び続ける展開。徳島は攻撃時サイドに偏らせて逆サイドにスペースを作る作戦だったと思うけど、サイドチェンジしなくても前に進めてしまうので、そのうち点が入るんだろうなという感じで進むも、ヴェルディのGK柴崎貴広選手が最後の最後で踏ん張って失点は許さない。

ミゲルアンヘルロティーナ監督は早々に3バックを諦めて4バックに変更。ただ、ちょっと変則的な配置。というのは、基本的な配置は右から安在和樹選手、田村直也選手、畠中槙之輔選手、平智広選手の4バックなんだけど、攻撃時はディフェンスライン右に田村選手、中央に畠中選手、左に平選手を配置して右サイドバックの安在選手を1列前進させる3バックに変化。守備の時は徳島のサイド攻撃に対し、左サイドは安西幸輝選手と平選手(+畠中選手もしくは梶川諒太選手)、右サイドはアランピニェイロ選手はそれほど下がらず安在選手と田村選手(+井上潮音選手)で守る。このアシンメトリーな戦術の肝はアンカーの内田達也選手。通常はアンカーの選手が最終ラインに入ることが多くなるけど、このシステムなら中盤の真ん中でどっしり構えられる。危険なエリアを閉じられるしこぼれ玉にも反応できる。なかなか奥の深いシステムだがや。そういうことでヴェルディは4バックに移行してから攻守の役割分担がはっきりして徳島のサイド攻撃をつぶすことに成功。試合開始直後思いのほか上手く攻めれちゃって戸惑ったはずの徳島は、今度は思いのほか攻められなくなって戸惑っちゃって、ヴェルディの前線からのプレスの餌食となり、試合は一気にヴェルディペースに。

ただ、ヴェルディの攻撃もそれほど多彩というわけではなくて、今日はドウグラス選手のポストも密着マークにあってあまり冴えなかったせいもあり、基本的には左サイド安西選手を経由してセンタリングかファールやコーナー貰ってプレイスキックという感じ。それでも、徳島は背の低い選手が多く、ヴェルディとしては極めて珍しいことに背の高さで優位に立つことができ、プレイスキックも大きな脅威。そうなれば俄然得意のドリブルが威力を増してくる。そこで引かなかった徳島は偉かったけど、できたスペースを効果的に使った安西選手がさらに躍動。そして先制点につながる。

前半31分、狙い通り左サイドで得たフリーキック。安在選手の正確なボールは平選手が相手を体で制してヘディングシュート。キーパー反応するも及ばず!東京ヴェルディ1-0徳島ヴォルティス

押し込まれてどうにもビルドアップができない徳島も作戦変更。前半38分早くも選手交代で4バックに変更するとともに中盤に技術のある選手を配置してボール回しと長身フォワードによる攻撃を期待。

ところが、徳島は中盤で期待通りボールキープはできるものの前線でフォワードが余ってるのになぜか外から攻めようとしてしまう。丁寧なのはいいけどサッカーの目的はボール回しじゃなくてゴール。その為にはゴール前にボールを運ばなくてはならないしシュートを打たなくてはならない。丁寧に外から攻めようとする徳島に対し中を崩されないヴェルディは守備練習をしているかのように安定して対応。外から攻めたい徳島と外から攻めさせたいヴェルディの思惑が合致した結果、徳島は外から攻めてもシュートすら打てずじまい。ドウグラス選手が封じられてるのは気になるけど、このまま守ってればどこかでプレイスキックでもう1点くらい取れたりしてヴェルディの勝ちは固いかな、という感じで前半終了。

後半に入りさすがに修正を見せる徳島。縦パスなどで中を使いだす攻撃にヴェルディディフェンスラインが右往左往し始める。ありゃりゃ、こりゃまずいな、と思う隙もなく、後半4分縦パスが起点になって左サイドから右サイドにボールが回りセンタリングからヴェルディ失点。東京ヴェルディ1-1徳島ヴォルティス

ヴェルディは相変わらず左サイドからの攻撃が冴えを見せるが、楔が入り始めた徳島の攻撃はさらに冴えを見せる。もうハーフタイムはないからチームとしての修正は難しいヴェルディ。試合展開としては徳島のペース。

しかし、ヴェルディは、この切羽詰まった状況で2つの転機により、試合ではなく結果を支配することが可能に。

1つは、プレーオフ出場のライバル7位松本山雅FCが京都サンガF.C.に0-1で負けていること。その為、ここから松本が2点以上取って逆転しなければ、たとえヴェルディが負けても松本はヴェルディより下の順位で終わる。同じくプレーオフ出場ライバルの8位ジェフユナイテッド千葉は勝利しても得失点差の関係でヴェルディは負けさえしなければ千葉が上の順位に行く可能性は低い。つまり、このまま同点で試合が終わればプレーオフに出場できる可能性が高いということ。無理に攻めないでちゃんと守ろう。運が良ければプレイスキックから得点できるかもしれないのだ。

もう1つは、言葉は悪いけど井上選手が怪我で交代に追い込まれたこと。実は徳島の縦パスの多くは井上選手の裏のスペースを突いたもので、前半からの運動量で体力的な問題もあったのかもしれないけどこの時間少し守備の穴にもなっていたのが井上選手。しかし、守りを第一優先させるべき状況で守備の穴を埋めるための交代にも関わらず守備に特化した選手がベンチに見当たらないため、井上選手を交代させることによって(攻めろという)誤ったメッセージを他の選手たちに伝えてしまう可能性があったわけで、この穴を埋めるのはきわめて繊細な問題になっていました。井上選手の交代が負傷による交代となったことで、ヴェルディにとって守備を重視しながら自然な形でスムーズに守備の修正作業が完了できたのだと思う。

ということで、井上選手に代えて橋本英郎選手がピッチに登場。さらに守備の強化も兼ねてアランピニェイロ選手に代えてカルロスマルティネス選手を投入。すると、やや動きが減っておりバテたのかな、と思わせていた安西選手が急に元気を取り戻します。

いやいや、安西選手はもう体力切れてるはずだから、ディフェンスラインを3枚に戻して、ドウグラス選手とアランピニェイロ選手を3対2で封じよう、これで失点は防げる、ディフェンスラインの人数を減らした分前線に人を捌けるから運が良ければサイド攻撃から前線勝負で得点できるはずだ、別に得点できなくても同点で終われば良いのだ、と徳島は思っていたはず。私もそう思いました。安西選手はもう終わったのだ、ヴェルディは得点できない、徳島の引き分け以上は固いと。しかし、それはただの死んだふりでした。

守備が安定しだしたヴェルディは安西選手を起点にボールを前線へと送り始めます。安西選手の2つのロングパスからのチャンスに安在選手がきわどいシュートを放った後、ついにそのときが訪れます。

後半43分、梶川選手の絶妙な左コーナーキックに畠中選手がヘディングシュート!惜しくもポストを弾くもごちゃごちゃしたこぼれ球に内田選手が詰め、ヴェルディ勝ち越しゴール!東京ヴェルディ2-1徳島ヴォルティス

その後さらにアップダウンを繰り返す安西選手に、3バックへと移行した徳島は対応できず。というのは、左サイドを起点に3トップで攻め込むヴェルディに対し、徳島は3枚のディフェンスだけでは守りきれないため両サイドバックを下げざるを得ず、いざ攻撃時に選手が最終ラインから出て行かなくてはならなくなってしまい、徳島はどうにも攻撃にギアが切り替えられないのです。

引き分けでよかったのに攻撃に出た結果うまく得点が奪えず結果的にペース配分に失敗した感じの徳島は、他会場で千葉がアディショナルタイムで逆転してしまい暫定で7位に転落。慌てて攻めるも形にならず、余力を残したヴェルディが逃げ切って勝利。その結果、東京ヴェルディが5位、最後に逆転した千葉が6位、徳島は残り2分でまさかの7位とプレーオフ圏内から脱落。プレーオフ最後の出場権はヴェルディと千葉がもぎ取りました。

ヴェルディの試合をテレビで観るのはまた特別な感慨があるけど、テレビはどうしてもわかりづらい。サッカーはやっぱりスタジアムで観るのが最高の贅沢です。勝てばなお!

 

柴崎 貴広 7.0 安定した守備でビッグセーブを連発。シーズンフル出場は自身初とのこと。足元の不安もあまり感じさせず安定したプレーを見せた。

畠中 槙之輔 6.5 ロティーナ監督としてはセンターバックにロングキックが蹴れる選手を考えているような気がする。小型ボランチが多いチーム事情もあってロングボールも蹴れてセンターバックの専門性も兼ね備えた畠中選手には期待が大きい。

平 智広 6.0 強さを見せて先制点を挙げる。守備は安定しているがキックがやや不安定。

田村 直也 5.0 気合が空回り。一人でラインを下げたり前に出られずプレッシャーを掛け切れなかったり最終ラインでボールロストしたり。ディフェンダーとしていつものように冷静なプレーを見せてほしい。

安西 幸輝 7.0 フリーキックでボールを掴もうとするトリックプレーを試みるも誰もひっかからなかった悲しい過去を持つ。途中でおとなしくなったのでさすがにバテたのかと思ったら、最後に復活して再び縦横無尽の働きを見せた。

安在 和樹 6.5 プレイスキックが大きな脅威となっていた。右足も正確。でもやっぱり攻撃の幅を考えると左サイドの方が良いような気がする。

内田 達也 6.5 後方だけでなく前線へも飛び出しチームの中心を担った。対戦相手としては内田選手をどかすことが勝利へのポイントとなるだろう。

井上 潮音 5.5 豊富な運動量と正確なテクニックでチームに貢献。やや反応がよくないのと動きが淡白なところがある。アンカーシステムはどうしてもアンカー脇が弱点になるので、縦パスに対する蓋になってほしい。

アラン ピニェイロ 5.0 攻守の切り替えも早くよく動いていたが、イマイチ連携が取りきれなかった。

ドウグラス ヴィエイラ 5.5 ポストプレイヤーとしての役割を十分に果たしたとは言いがたいが、献身的に裏に走りこんで基点になったことが得点につながった。

梶川 諒太 7.0 抜群の運動量とセンスのある縦パスで多くのチャンスを演出。プレイスキックでもチームに大きく貢献した。

橋本 英郎 6.0 スクランブル発進。守備の選手ではないので負担は大きかったと思うが得意の攻撃でしっかりと貢献。

カルロス マルティネス 6.5 まず守備面でチームを落ち着かせ、得点につなげることができた。1トップに入ってからも基点となり試合を優位に進めた。

高木 大輔 6.0 いきなり相手選手と入れ替わるよくない守備を見せどうなるかと思ったが、その後は運動量を生かして試合を閉めた。

ミゲル アンヘル ロティーナ監督 7.5 ピンチをチャンスに変える見事な演出。個々の選手の特徴を生かして独特なチームを作り上げた。

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