平成27年6月16日(火)W杯アジア2次予選兼アジアカップ2019予選 日本代表対シンガポール代表 埼玉スタジアム2002

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ハリルジャパンは今までどおりの試合をしたものの得点が奪えなかった結果、サイドからのアーリークロスに活路を見出そうとしたもののディフェンスに当ててしまう両サイドバックがどんどん自信をなくしてセンタリングできなくなってしまい、頼みのコーナーキックも単純にフィニッシャーの頭に上げるだけで今までのようなポジションチェンジからのごちゃごちゃからのファーサイドでフリーシュート作戦が機能せず、それでもシンガポール代表のカウンターの精度が低かったこともあって失点は免れ、0-0の引き分けで試合終了、ワールドカップへの第一歩を踏み出しました。

ハリルジャパンの一番の攻撃手段の一つであるボランチからの縦パスが全く機能しない。今日の試合では、シンガポール代表がボールを頂点にしたピラミッド型守備体系を敷いていて、中央にでんと居座る柴崎岳選手、長谷部誠選手は相手からのプレッシャーがないからか、W杯予選というプレッシャーがあるからか、のんびりしたプレーで縦パスを入れることができず、前線も本田圭佑選手以外はスペースを見つけ出すことができず受け手になりえず、とにかく縦パスを入れることができずボールが前に運べない。中央からでなくサイドライン際から縦パスを入れたりボールを早く横に動かしてピラミッドの横から楔を打ったりすればよかったが、あまりに中盤がフリーすぎたせいもあって単調なミスを繰り返す。

ハリルジャパンもう一つの得意とする攻撃手段としてコーナーキックを含むプレイスキックがあげられる。イラク戦ではニアサイドで高い選手がごちゃごちゃしながら競った結果ファーサイドにこぼれたボールへクロスしてフリーになった選手が押し込む形が見られたが、今日の試合ではフィニッシャーの頭に直接合わせるだけでファーサイドフリーになる選手もいなければボールもニアサイドではなくシュートが打ちやすいゴール前に直接放り込む。誰もが主役になりたがった感じ。シンガポール代表ゴールキーパーとしてはどこから打ってくるか分かるから、至近距離の止めにくいシュートの中では比較的タイミングを合わせやすくシュートを防ぎやすかったと思う。これは最後まで修正されなかった。

攻撃手段を失ったハリルジャパンだが、サイドからのアーリークロスだけはかすかに得点の匂いがする。中から攻めないので香川真司選手に代えて高さで競れる大迫勇也選手を投入。縦パスのうまい柴崎岳選手に代えてサイド攻撃ができて中央こぼれ球からの得点が期待できる原口元気選手を投入。最後はごちゃごちゃで中央勝負ができない宇佐美貴史選手に代えて空中戦も競れる武藤嘉紀選手を投入。冷静に試合を分析して勝利に近い采配を見せているなあと思ったら、原口選手はなぜかボランチの位置に下がる、アーリークロスを入れるべきサイドバックがミス連発でクロスを上げるのを躊躇、ゴール前で4人以上渋滞してるから岡崎慎司選手が飛び込むスペースがない、とすべてが悪い方向へ。

今までどおりの攻撃をしていたが、中盤でプレッシャーをかけられることなく中央低い位置からの縦パスについてしっかり守備されたことでゴールに近づきづらくなり、今までと違ってたまたま得点が奪えなかったことで今までやっていないサイドからのアーリークロスをしたものの機能しなかった。

守備は今までもそうだが、相手にスペースを与えすぎていて、トップにボールが入ったときにうまく挟み込んでボールを奪うことができない。もともとハリルジャパンは守備のとき前へのプレッシャーが乏しく押し込まれてしまうことが多かったが選手が固定されていないこともあって試合ごとの修正があまりうまくいっていない。トップに入った瞬間にセンターバックとボランチがしっかりプレッシャーをかけること、飛び出した選手の裏をしっかりカバーすること、このあたりの約束事をこれから詰めていくことになるのだろう。

今日のハリルジャパンは試合の入り方として今までと同じことをしていたがたまたま得点が奪えなかっただけに過ぎない。試合を評価するときに得点失点という結果は一番大切なことだが、プロセスを見つめないと次の結果につながらない。チームとして実力を培うために今日の試合結果を大切にしてほしい。

今後のハリルジャパンは今までやってきた早い縦パスとコーナーキックという武器に磨きをかけていくことになるのだと思う。ただ、これは「自分たちのサッカー」ではないだろうから、どこまで選手が勝ちにこだわれるか、そのあたりがチームとしての成熟度に関わっていくのではないか。

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