平成28年1月22日(金)リオデジャネイロ五輪最終予選兼U-23アジア選手権準々決勝 日本対イラン カタール・ドーハ アブドゥッラー・ビン・ハリーファ・スタジアム

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負けたら終わりのトーナメント。延長までもつれ込んだ試合でしたが、日本代表は3-0でイラン代表を一蹴。見事準決勝進出を決めてオリンピック出場に王手をかけました。

4-4-2で臨む日本代表に対して4-1-4-1のイラン代表。中盤中央は日本代表ボランチ2枚とイランインサイドハーフ2枚が基本的にマッチアップする形だが、アウトサイドハーフが下がってきたときフリーになってしまう。通常はサイドバックが上がるところかと思うがスペースを与えたくない日本代表はサイドバックは最終ラインに残す。ところがサイドハーフが下がってこない(特に左サイド)。その結果中盤はイランが制することに。ただ、岩波拓也選手、植田直通選手が中央で競り勝つのでそれほどピンチには陥らない。
中盤を生かせない日本の攻撃陣はオナイウ阿道選手の頭を狙って攻める。ところが日本代表ボランチの二人はボールをつなぐのはうまいものの大きな展開ができないので日本代表の攻撃はサイドチェンジのスピードが遅くなり余計に攻撃が停滞してしまう。しかも、ロングボール自体が少ない上、足元があまり得意でないオナイウ選手が徐々に下がりだし、もっとボールが繋げなくなって逆にカウンターのピンチに。久保裕也選手はそこそこボールがつなげるからかオナイウ選手を前線に残して久保選手が下がるようになるが、イラン代表は中央の守りの数を増やそうとしないのでオナイウ選手と久保選手が前線に張って2対2を作り出した方が良かったと思う。左サイド中島翔哉選手は全く機能しないのであれだが、矢島慎也選手が攻守に貢献。室屋成選手もおたおたしながらも豊富な運動量で右サイドの活性化に大きく寄与する。
岩波選手からのロングボールがなかったら日本代表は前半もっとリズムが悪かったに違いない。
後半に入っても、プレイスキックでしかチャンスを作れない両チーム。日本代表は2トップが前線に張るようになるもパスの出し手がいない。後半37分浅野拓磨選手を投入してもパスの出し手がいない。浅野選手の個人技でチャンスを作り出すものの得点にはいたらず延長戦に突入。
足が止まり始めるイラン代表。中央からごちゃごちゃし始める。中央に選手が集まるので外はサイドハーフにカバーしてほしい日本代表だが、特に左サイドはカバーがないので選手が引っ張られてたびたびピンチに陥る。ゴールキーパー櫛引政敏選手の体を張ったプレーやクロスバーに守られ切り抜けた日本代表は待望のときを迎える。
延長前半6分、左サイドから丁寧につないだボールは右サイド室屋成選手へ。切り替えして左足であげたボールはその前に走り出して右サイドにスペースを作っていたゴール前フリーの豊川雄太選手にどんぴしゃ。頭で合わせて日本代表が先制点を挙げる。
その後イラン代表中央突破からのピンチを何とかしのぎ延長戦も後半に入る。
延長後半4分、オフサイドを取った日本代表はゴールキーパー櫛引選手からのロングボールにオナイウ選手が競り、こぼれ玉を拾った浅野選手から戻したボールに中島選手が遠目の位置から思い切ったシュートで2点目。
さらに延長後半6分、イラン代表キーパーのクリアキックを遠藤航選手が拾ってボールは再び左サイド中島選手へ。ドリブルで切り込んだ中島選手のシュートは再度ゴールに突き刺さり日本代表は3点目を挙げる。
その後はお互いチャンスを作り出すもののゴールにはいたらずそのまま試合終了。得点を重ねた日本代表は結果的に圧倒することになりました。
守備から考えたと思われる選手起用の中で唯一攻撃のための布陣であった中島選手。試合の中でほとんどの時間機能していませんでしたが、2得点という最高の形で監督の期待に応えました。他の選手を起用していたらもっとピンチが少なくチャンスが多かったかもしれませんが3点取れなかったかもしれません。このまま結果にこだわってオリンピックの出場権、そしてアジアチャンピオンの座をつかんでほしいと思います。

櫛引政敏 7.0 思い切った飛び出しで失点を防ぐ。一つだけ明確なミスがあったが体を張って守り抜く。自陣深くからのフリーキックではチャンスを作り出していた。

岩波拓也 7.5 競り合いで勝ちきり攻守に貢献。チームで唯一ロングボールでサイドチェンジができた。岩波選手がいなかったら日本代表はもっとリズムが悪くなっていたに違いない。

植田直通 7.0 一つだけ入れ替わってしまったが、持ち前の強さを発揮。空中戦では絶対の強さを誇る。苦手のカバーも意識して頑張っていたようだ。

室屋成 6.5 ミスは多かったが豊富な運動量でチームに貢献。調度疲れていたのでボールと立ち足に間が空き先制アシストとなった良いセンタリングができた。積極性のなせる業。最後まで体を張ってよく頑張った。

亀川諒史 5.5 コーナーからカウンターを受けたときの守備など怖くて怖くて仕方ない。攻守に良く頑張り中央の守備にも貢献していたことは無失点のポイントとなった。

遠藤航 7.0 中盤での守りは完璧でボールつなぎも良かった。ゴール前に飛び出すことはなかったがそこまで望むとバチがあたる。

原川力 6.5 ボールを取られないので安心できる。確実につなげるのでチームメイトも動きやすいのではないか。もう少し大きいボールも期待したい。

中島翔哉 5.5 2得点挙げたのは本当にすごいのだが、その他があまりにも悪すぎるという評価泣かせの活躍。中盤で起用されている以上得点だけでなく守備や攻撃の組み立てにもある程度期待されていたはずだが、ボールを持ったらドリブルして取られる、守備で戻らず穴を作る、という最悪のプレーだった。勝ったから良いが負けていたら戦犯になっていてもおかしくない。でも2得点はすごい。

矢島慎也 6.5 良くボールに絡みゴール前まで進出したかと思えば守備でもチームに貢献。次の試合でも同じように活躍してほしい。

久保裕也 6.5 よくボールが収まる。イランの守備体系を考えず前半ボールをもらいに下がってしまったのはいただけない。楽なプレーでボールをつないで得点できるような工夫ができれば結果が伴うと思う。

オナイウ阿道 6.0 体力を生かして守備まで良く頑張った。ただ、あまりにも足元が悪すぎてほとんどボールが味方につながらない。下がってしまうと簡単にボールを奪われてカウンターのリスクが高まる。空中戦とスピードは一級品なのだが…

浅野拓磨 6.5 個人技で突破できるので頼もしい。出し手がいないチームにあって特徴を活かしきれないがそれでもチームに貢献してくれる。シュートにあまり積極的でないのは昔から。チャンピオンシップで解消されたかと思ったがそうでもなかった。延長後半9分に右サイドを抜けてセンタリングがミスになったように見えたのは、オナイウ選手が止まっちゃったからだからシュートは打たなかったけど悪い判断ではなかったと思う。

豊川雄太 6.5 貴重な先制点を挙げる。攻撃の選手なのだと思うが、途中で入ったのに守備をサボって前線に残るのはいただけない。オナイウ選手が下がったからかもしれないが、途中出場というスタミナ面のメリットをチームに生かしてほしかった。

大島僚太 5.0 クローザーとして入ったのだろうが、守備に入るタイミングが遅くピンチを招く。オナイウ選手の判断の悪いパスは不運だったが、大島選手の技術ならなんとかできるはず。その後クロスバーに守られたが本来大島選手がその前に左サイドから中央にボールが出た段階でつぶさなければならなかった。3点差あったので警告もらうよりは良いが…

手倉森誠監督 6.5 采配が良いとは思えないが勝っているのだから悪くないのだろう。恐らく高さを考えてオナイウ選手を残すなど弱気とも取れる采配だが結果から見れば現実的といえる。中島選手に拘るのはチームとしての慣れかと思うが、今日の試合は賭けに勝った感じ。どちらかというと中盤の組み立てを捨ててトップの頭を狙う戦略だと思うが、勝てた要因は相手のシュートがたまたま入らなかったのと体力的に相手の足が止まったことが大きい。勝っているからというのもあるが、俺たちのサッカーに拘らせない選手掌握術が監督としては大きい。後の課題はプレイスキックか。次も結果に拘ってほしい。

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